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大阪地方裁判所 昭和53年(ワ)5391号 判決

原告

野崎泰仙

(ほか一六名)

原告ら訴訟代理人弁護士

松尾直嗣

(ほか七名)

被告

大阪淡路交通株式会社

右代表者代表取締役

加藤友保

右訴訟代理人弁護士

竹林節治

(ほか三名)

主文

一  被告は、原告野崎泰仙に対し金六一七、一一九円、原告山田繁雄に対し金六〇五、〇二七円、原告佐々木通男に対し金三七二、一九二円、原告日高賢司に対し金六七〇、一六四円、原告江平幸訓に対し金三四五、二一二円、原告小山利一に対し金六二六、三五七円、原告阪上征二に対し金四一〇、七六七円、原告島袋光治に対し金四七六、五一八円、原告藤原照雄に対し金四七七、六二九円、原告末松英男に対し金三九八、二三一円、及び別紙(略)債権目録の右各原告に対応する差額欄記載の各内金に対するそれに対応する遅延損害金発生年月日欄記載の各年月日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

被告は、原告原田三郎に対し金五八三、八二三円、原告山田浩に対し金五七八、六七六円、原告松並正男に対し金五八七、九六五円、原告石谷幸雄に対し金六六二、二二三円、原告山本介一に対し金一七四、九四二円、及び別紙内金債権目録の右各原告に対応する差額欄記載の各内金に対するそれに対応する遅延損害金の発生年月日欄記載の各年月日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

被告は、原告新木彰に対し金二七、六〇一円、及びこの内金一二、九五〇円に対する昭和五四年五月二八日から、内金一四、六五一円に対する同年六月二八日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを二分し、その一を被告の、その余を原告らの各負担とする。

四  この判決は、第一項につき仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告原田三郎、原告山田浩、原告松並正男、原告石谷幸雄、原告山本介一に対し、別紙内金債権目録の右各原告に対応する冒頭記載の金員、及び別紙内金債権目録の右各原告に対応する差額欄記載の各内金に対するそれに対応する遅延損害金の発生年月日欄記載の各年月日から各支払済みまでと訴状送達日の翌日から支払済みまで各年五分の割合による金員、その余の内金に対する訴状送達日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

被告は、その余の原告らに対し、別紙債権目録の各原告に対応する冒頭記載の金員、及び別紙債権目録の右各原告に対応する差額欄記載の各内金に対するそれに対応する遅延損害金の発生年月日欄記載の各年月日から各支払済みまで年五分の割合による金員、その余の内金に対する訴状送達日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は、被告の負担とする。

3  仮執行の宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は、原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  当事者

原告らはいずれも観光バス業を営む被告の従業員(運転手)であり、かつ全大阪観光バス連絡会議加盟の淡路観光労働組合の組合員である。

2  労働基準法違反の時差手当と時差時間に対する時間外労働割増賃金の不払

(一) 原告らは、別紙債権目録の各原告に対応する時差手当欄記載の金額を後記(二)の各年月に対応する一時間当りの時差手当額(昭和五一年四月から同五二年三月までは一時間につき四四五円、同五二年四月から同五三年三月までは一時間につき四八五円、同五三年四月からは一時間につき五三五円)で除した時間外労働をしたが、被告は、それに対し、同目録の各原告に対応する次式の計算方法によるところの労基法所定の割増賃金の基礎となる賃金欄記載の額に右時間外労働時間を乗じた労基法所定の割増賃金欄記載の時間外労働割増賃金を支払うべき義務があるところ、同目録の時差手当欄記載の時差手当を支払ったのみで、同目録の差額欄記載の時間外労働割増賃金を支払わない。

{(基本給+班長手当+技術手当+教習手当+皆勤手当+通勤手当)×二〇〇分の一×一・二五}+{(キロ手当+乗務手当+宿泊手当+清掃手当)×二〇〇分の一×〇・二五}

(二) ところで、被告においては、時間外労働に対して、次の計算方法により、一定の時間に対しては労働基準法三七条所定の時間外労働割増賃金が、その余の時間に対しては同条に違反するところの時差手当と称する賃金が支払われていた。

その計算方法は、一日二一〇キロの基本走行キロ数に、実際の時間外労働時間を二分間につき一キロの割合で計算したキロ数を加え、実際の走行キロ数が右合計キロ数を超える場合にはその時間外労働時間に対して労働基準法三七条所定の時間外労働割増賃金が支払われ、実際の走行キロ数が右合計キロ数に満たない場合にはその満たないキロ数を一キロにつき二分の割合で計算した時間について時差手当と称する一律の手当(昭和五一年四月から同五二年三月までは一時間につき四四五円、同年四月から同五三年三月までは同四八五円、同年四月からは同五三五円)が支払われ、残余の時間についてのみ同条所定の時間外割増賃金が支払われるというものである。

例えば、被告においては八時三〇分から一七時三〇分までが定時であるところ、早朝六時三〇分に出勤し、一九時三〇分に退社した場合を考えると、労働基準法所定の時間外労働時間は四時間であるが、被告においては、基本走行キロ数二一〇キロに、実際の時間外労働時間四時間(二四〇分)を二分間につき一キロの割合で計算したキロ数一二〇キロを加え、一日の走行キロ数が右合計キロ数三三〇キロを超える場合には全時間外労働時間四時間に対して労働基準法三七条所定の割増賃金が支払われ、実際の走行キロ数が右合計キロ数に満たないところの三一〇キロであった場合にはその満たないキロ数二〇キロ(三三〇キロから三一〇キロを引いたもの)を一キロにつき二分の割合で計算した時間四〇分について同条所定の時間外労働割増賃金が支払われず、ただ五三五円に六〇分の四〇を乗じた三七四・五円の時差手当のみが支払われ、残余の三時間二〇分(二〇〇分)についてのみ同条所定の時間外労働割増賃金が支払われる。

ちなみに、一時間当りの平均賃金を七〇〇円とすると、時間外労働一時間について、労働基準法所定の時間外労働割増賃金が支払われる場合と時差手当が支払われる場合との支給金額を比較すると、前者の場合は八七五円、後者の場合は五三五円となり、後者の場合には前者より三四〇円低額となる。

(三) しかしながら、右のような労働時間及び賃金等の計算方法によると、次に詳述するように、時差手当が支払われた時間に対し、それが時間外労働時間であるのにもかかわらず、労働基準法所定の時間外労働割増賃金が支払われないこととなる。

(1) 労働時間を乗務時間と非乗務時間とに分け、乗務時間を走行キロ数から算出する方法をとると、右計算による労働時間と現実の労働時間とのくい違いが生じ、例えば、現実に長時間ハンドルを握って運転していても、走行キロ数が被告主張の基準に満たない場合には、現実の運転時間の一部が休憩時間とみなされて、賃金の支払の対象とならないという不都合が生ずる。

これは、実働時間、即ち現実に運転したり待機したりしている時間等はすべて労働時間として賃金支払の対象としている労働基準法に明らかに違反する。

この点について、労働基準監督署は、昭和五三年六月、被告に対し、「走行キロから時間を算出する方法をとっているため労働時間が八時間を超えた場合でも法定通りの割増賃金を支払っていない場合がある」とし同法三七条に違反するとしてその是正勧告をした。

(2) 右根本的問題点に関連して、被告の休憩時間に対する考え方も問題である。

休憩時間とは、一般に、労働時間の中断によって使用者の労務指揮権から完全に解放された時間であって(従って、作業の手順上待機態勢にある手待時間は労働時間であって、休憩時間ではない。昭和二二・九・一三発基一七号)、人たるに値する社会生活を営むための時間的余裕を保障するものとして、特段の事情のない限り、私的行動の自由が許された自由時間でなければならないが、被告が休憩時間と主張する駐車時間や待機時間は右要件を欠くから労働時間であって休憩時間ではない。即ち、まず配車地で客が全員集合するまで待っている時間については、この場合、ほとんど路上駐車であり、その場合は、車輛の中かその周辺にとどまっていないと駐車違反となるおそれがあるため、運転手は車輛から離れることができず、また、客を待っている関係で常にその集合状態に目を配っていなければならず、客の幹事や添乗員とその日のコースや運行計画などについて詳細な打合わせをする必要もあり、従って右時間が休憩時間でないことは明らかであり、次に、ドライブイン等での駐車時間については、これはいわゆるトイレ休憩であって、せいぜい一〇分間ないし二〇分間の駐車であり、その時間、車外に出ない客もいるから、少なくとも運転手かガイドのいずれかが車内にとどまる必要があり、運転手が車輛を離れるにしても、それはトイレに行ったり、ジュースを立飲みしたりする程度のものであって、到底休憩時間とはいえず、次に、現地での見学、見物中の駐車時間については、この場合、運転手は、長時間駐車させて待っている場合が多いが、その場合にも、路上駐車のときと、駐車場に駐車するときとがあり、路上駐車のときは、前記配車地における場合と同様の理由から、運転手は車輛を離れることができず、駐車場に駐車させるときでも、駐車場によっては他の駐車車輛との間での車輛の入替作業があったり、見学、見物に行かない客やその途中で車内に戻ってくる客のために車輛に施錠をしないままにしておかなければならなかったり、出発時間が客の都合や天候のために予定より変更されたり、客の見学、見物中の時間を利用して車内の清掃をしたりなどのため、運転手は車輛から離れることができないから、右時間は休憩時間ではなく(その時間、運転手が読書をしたり喫茶店に入ったりしたとしても、運転手は、現場における責任者として、車輛や客の安全の確保を委ねられており、また、客商売である関係上、客からの注文に対して常に対応できるような態勢をとっていなければならず、運転手は、精神的に解放された状態に置かれてはおらず、場所的にも時間的にも自由な時間とはいえない)、次に、出庫前及び入庫後の待機時間については、この時間において、運転手は、車輛の清掃、タイヤの交換、オイル交換、車輛の天井磨きなどの作業をしており、年に三、四回程度ではあるが、いわゆる飛び込みの仕事もあったのであって、右時間は休憩時間とはいえない。

(3) 被告は、出勤、退勤時刻について、八時三〇分から一七時三〇分までが定時であるとする定めはないと主張するが、現実の勤務実態からすると、右が定時である。

即ち、被告は、一〇時出庫の場合でも八時三〇分に出勤するよう命令し、一五時入庫の場合でも一七時三〇分まで残留するよう命じ、しかも、昭和五四年三月一三日までは、夕方に翌日の運行指示をしており、それに遅れたりそれより早く退社した場合には遅刻や早退として賃金カットの対象としていた。

また、被告は、走行キロ数から乗務時間を算出する方法をとり、これを基礎として時間外労働の存否を判断しているが、他方、八時三〇分から一七時三〇分までの間に仕事が終った場合には、走行キロ数が被告主張の基準を超えていくら多くなっても、時間外労働はないものとしており、これは、被告が右定時を基準としていることを表わしている。

(四) 被告が、時差手当を導入した目的は、スキーバスの運行などで、乗務員の労働時間が長時間となることが避けられず、それによって多額の割増賃金を支払わなければならないことを回避するため、勤務時間の定時を残す一方、一キロメートル二分との標準的なハンドル時間を設定し、標準時間以上のスピードで走行する場合にそれに対応する部分のみを労働時間とし、標準に達しないハンドル時間や待機時間を時間外労働割増賃金の対象から外すことによって、労働基準法に違反してまでも労働効率の増進と、人件費の節約をして、営利の追求を計ることにあった。

3  結論

よって、原告らは、被告に対し、時間外労働割増賃金とそれと同額の労働基準法一一四条所定の附加金の合計金額である別紙債権目録の各原告に対応する冒頭の金員及びそのうち各月の未払時間外労働割増賃金である同目録の各差額欄記載の金員に対する各月の給与支給日の翌日である同目録の遅延損害金の発生年月日欄の各年月日からその支払済みまで、各附加金である同目録の附加金欄記載の各金員に対する本件各訴状送達日の翌日からその支払済みまで、各民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めることができるところ、原告原田三郎、同山田浩、同松並正男、同石谷幸雄、同山本介一は、それぞれその内金として、別紙内金債権目録の右各原告に対応する冒頭の金額及びそのうち差額欄記載の各金員に対する同目録の遅延損害金の発生年月日欄記載の年月日からその支払済みまで、うち差額欄記載の金員と同額の金員にその余の内金を加えた金員に対する本件各訴状送達日の翌日から支払済みまで、各年五分の割合による金員の支払を、その余の原告らは全額の支払を、それぞれ求める。

二  請求の原因に対する認否

1  請求の原因1の事実中、原告らが観光バス業を営む被告の従業員(運転手)であり、かつ淡路観光労働組合の組合員であることは認めるが、同組合が全大阪観光バス連絡会議に加盟していることは不知。

2  同2の(一)の事実中、別紙債権目録の労基法所定の割増賃金の基礎となる賃金欄記載の額、一時間当りの時差手当の額、被告が原告らに対し別紙債権目録時差手当欄記載の時差手当を支払ったことは認めるが、その余は争う。

同2の(二)の事実中、時差手当の基準金額が昭和五一年四月から同五二年三月まで一時間につき四四五円、同年四月から同五三年三月まで同四八五円、同年四月から同五三五円であることは認めるが、その余は争う。被告における労働時間の計算方法は後記被告の主張のとおりである。

同2の(三)は争う。

同2の(四)は争う。

3  同3の事実中、被告における原告らの給与支給日が毎月二七日であることは認めるが、その余は争う。

三  被告の主張

1  被告は観光バスによる旅客運送をその営業内容としているところ、観光バスは不定期に旅客の指定する時間帯に運送するため、運転手の乗務開始時刻、乗務終了時刻が千差万別であって、乗務勤務をする運転手の勤務時間を一定にすることができないので、被告においては、就業規則上バス運転手の始業時刻は出庫前二〇分とし、終業時刻は入庫後四〇分と定めた。

被告における運転手の労働内容は、準備、後始末を別とすれば、主としてバス運転乗務であるところ、その業務遂行は被告の支配下を離れ運転手の自由意思に委ね、また休憩時間も運転手各人の管理に任されているため、その勤務時間を算出するについては乗務時間を基準とするよりも走行距離を基準としたほうが合理的である。

2  そこで、被告における運転手の労働時間及び賃金等は、次のとおり定められていた。

(一) 拘束時間は、出勤時刻から退社時刻までとする。

(二) 労働時間は、出庫時刻二〇分前の時刻から入庫後四〇分間までの時刻とする。

(三) 労働時間は、非乗務時間と乗務時間とに分け、非乗務時間は、出庫時刻二〇分前の時刻から出庫時刻までの始業点検等をなすべき準備時間(始業時間)の二〇分間と、入庫時刻からその四〇分後の時刻までの終業点検、車輛清掃、報告等をなすべき後始末時間(終業時間)の四〇分間との合計一時間であり、乗務時間は、次の計算方法によって算出されるところの実際にバスに乗務している時間である。

(四) 乗務時間は、一日の走行距離から算出することとし、その算出方法は、走行距離一キロメートルを二分間として、一日の走行距離の合計をその割合によって換算して得た時間数とする。

(五) 一日の拘束時間から休憩時間を差引いた時間が、非乗務時間と右(四)の計算方法による乗務時間との合計時間を上まわる場合には、その差の時間を時差時間として、その時間に一時間当りの一定金額を乗じたところの時差手当を支払う。

(六) 一日の拘束時間から休憩時間一時間を差引いた時間が八時間以上であって、かつ、非乗務時間と前記(四)の計算方法による乗務時間との合計時間を下まわる場合には、一日の拘束時間から休憩時間一時間を差引いた時間を上限として、八時間を超えた時間に対して労働基準法所定の時間外労働割増賃金を支払う。

(七) 一日の拘束時間から休憩時間一時間を差引いた時間が八時間に満たない場合には、八時間に満たない分の賃金は支払わず、右時間を八時間で除した割合による賃金のみを支払う。

(八) 右時差手当を支給する趣旨は、被告においては、右のとおり、労働時間を走行距離から算出する方法をとっている関係から、休憩時間(所定の一時間と、出勤時刻から出庫二〇分前までの時間と、入庫四〇分後から退社までの時間と、駐、停車時間)が延長して拘束時間が長くなることの代償として、右休憩時間は本来労働時間ではなく賃金支払の対象とはならないのではあるが、それに対して時差手当を支給することによって従業員に有利な取扱をしているものであって、時間外労働に対するものではない。

(九) なお、走行距離によって算出する乗務時間が実際の労働時間より短かくなりがちな巡回バス等の特殊な乗務については、時間外労働割増賃金の補完としての乗務手当(一乗務につき八〇〇円)を支給しているところ、被告は、原告らに対し、別表(略)のとおり乗務手当を支給した。

3  被告における運転手の休憩時間には次のようなものがある。

(一) 出勤時刻から出庫二〇分前までの時間

原告らは、右の時間、被告から何らの業務命令を受けることもなく、運転手控室や構外の喫茶店などで休憩していた。運転手控室は、大阪営業所、螢ケ池営業所ともに、全運転手が入れる広さを有し、テレビジョン、碁、将棋などの娯楽設備が設けられ、運転手は、そこで、右娯楽設備を使用したり、新聞や雑誌を読んだり、備付けの寝具を利用して仮眠をとったりなどしていた。運転手が構外の喫茶店に行ったり、私用で外出することは、被告の担当者に届出れば、自由になしえた。なお、右時間を利用して、自発的に担当車輛の清掃をする運転手もいたが、被告はそれを命じたことはなかった。

(二) 入庫四〇分後から退勤時刻までの時間

右時間も右(一)と同様であるうえ、運転手は、社内で入浴して休憩することも多く、また、夜行運転をした運転手は、入浴後に仮眠をしていた。

(三) 入庫後から同じ日の次の出庫までの時間

一日に担当する運行が複数の場合、各運行の間において、運転手控室や喫茶店において休憩しており、次の出庫時刻が定まっている関係で、右時間の自由な利用が保証されていた。

(四) 配車地到着時刻から配車時刻までの時間

運転手は、出庫後に配車地までバスを回送し、配車地において乗客を乗せることになるが、配車時刻より早く着くことが多く、その場合、乗客が集まるまでの時間、運転手は、車内や喫茶店において休憩し、配車時刻が定まっている関係から、それまでの時間の利用の自由が保証されている。

(五) 駐、停車時間

乗客を乗せて走行中には、所定の食事時間(一時間)以外にも駐停車時間があり、その時間の大部分は休憩時間である。被告の行なう運行は、少数の目的地における長時間の観光、遊園、見学、行事のための送迎運行が多く、多数の名所旧跡等を見学遊覧する観光運行は少ない関係で、駐、停車時間が長時間となり、一ケ所において二ないし四時間にもなる。運転手は、乗客の下車後所定の場所に駐車させれば、その後集合時間までは自由に休憩することができる。後者の場合でも、駐、停車時間がまとまった長い時間にわたることは少ないにしても、駐車場に入れば、乗客の見学などしている間、車中や運転手用休憩所において休憩することができる。いずれの場合にも、観光地の駐車場は広く、一旦駐車すれば、出発までの間に再度移動する必要はなく、途中で移動が必要であるような駐車場でも、長時間の駐車の場合には、移動の必要のない位置に駐車することができる。工場見学の場合にも、工場構内の所定の場所に駐車すれば、途中で移動する必要はない。また、短時間の観光のための駐、停車の場合を除き、遊園のための駐車、乗客が他の交通機関を利用している間の駐車、工場見学のための駐車などの場合には、客の全部が下車し、残留する客はない。仮に、客が残留していても、それへのサービスのために車中に待機する必要はない。

(六) 指定地へ向かうため、または指定地から帰社するために他の交通機関を利用した時間

被告は、右時間を時間外労働割増賃金及び時差手当の支給対象時間としているが、元来、次の業務のため移動するに要する交通機関利用の時間は、その間において、物品の監視や書類の作成などの指示がなされていない限り、場所的制約はあるにしても、睡眠、読書等労働者において自由に使用でき、しかもその時間の範囲が明確であるから、休憩時間である。

(七) 乗客と共に宿泊する宿泊乗務における宿泊時間

被告においては、右の場合、一七時三〇分以前に運行及び後始末を終えて、旅館で休憩したとしても、一七時三〇分までの時間を拘束時間として時差手当及び時間外労働割増賃金の対象とし、翌朝八時三〇分以降に準備作業を開始したとしても、八時三〇分から拘束時間が開始したものとして右同様の対象としてきた。特にスキーバスなどの夜行の場合には、午前中に目的地に到着し、運転手は車輛の清掃等を行なって駐車場に入れた後は、旅館において長時間休憩することになる。この場合、運転手にはなんらの労働も予定されておらず、自由にその時間を使用できる。夜行での帰路の場合の出発時間までも同様である。

4  原告らは、下車勤務だけでなく、乗務勤務の場合にも定時の定めがある旨主張するが、就業規則(〈証拠略〉)上、乗務勤務については、出庫時刻前二〇分に出勤し、入庫時刻四〇分後に退勤することと定められており、それ以外に定時の定めはない。原告らは、右出勤時刻より前であっても八時三〇分から右出勤時刻までに出勤することにより、あるいは、右退勤時刻後に一七時三〇分まで残留すれば、前記のとおり時差手当が支給されることから、乗務勤務の場合においても右定めと異る出退勤方法をとっていたが、賃金計算上の基礎時刻と業務命令としての出退勤時刻とが相違することは一般的であり、その取扱が労働者にとって有利ならば違法ではないし、それをもって、使用者の命令の内容が変更されたことにもならない。右のような就業規則の定めにより、乗務勤務の運転手が、八時三〇分以降に出勤しても、出庫時刻二〇分前までに間に合っていさえすれば遅刻とはならず、入庫時刻から四〇分間を経過してさえすれば、一七時三〇分より前に退勤しても早退とはならず、懲戒処分の対象ともならず、また、拘束時間が九時間以上でありさえすれば、賃金も減額されない。

5  被告における原告らに対する賃金の支払期日は、毎月二七日であったところ、原告新木彰の請求にかかる時間外労働割増賃金のうち昭和五三年七月分から同五四年四月分までの賃金請求債権は、各支払期日の翌日から二年間を経過したことにより、労働基準法一一五条所定の消滅時効が完成した。

6  原告新木彰が被告に対し、時間外労働割増賃金を請求しうるとしても、昭和五三年七月分から同五四年四月分までの分についての附加金請求権は、各支払期日の翌日(毎月二八日)から二年間を経過したことにより、労働基準法一一四条但書所定の除斥期間が満了した。

7  原告らの附加金についての遅延損害金の請求は、附加金の請求が、一種の公法的制裁として、裁判上の請求のみが許されているから、裁判所が判決によってその支払を命じて初めて支払義務が生ずるものであって、そうである以上、それに対する遅延損害金の請求はなしえないものというべきである。

四  被告の主張に対する認否

被告の主張は争う。

第三証拠(略)

理由

一  原告らは、いずれも観光バス業を営む被告の従業員(運転手)であって、淡路観光労働組合の組合員であること、以上の事実は当事者間に争いがない。

二  原告らが受くべき時間外労働の割増賃金の算定の基礎となる一時間当りの時間外労働割増賃金額は、別紙債権目録の各原告に対応する労基法所定の割増賃金の基礎となる賃金欄に記載の額であること、原告らは、被告から、時差手当として、別紙債権目録の各原告に対応する時差手当欄に記載の金員を支給されたこと、右時差手当の支給基準額は、昭和五一年四月から同五二年三月までは一時間につき四四五円、同五二年四月から同五三年三月までは一時間につき四八五円、同五三年四月からは一時間につき五三五円であったこと、以上の事実は当事者間に争いがない。

三  (証拠略)を総合すると、被告における運転手である従業員の勤務時間及び賃金等は、次のとおり定められていることが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

1  拘束時間は、出勤時刻から退勤時刻までとする。

2  労働時間は、出庫時刻の二〇分前から出庫時刻までの二〇分間(始業点検等のための準備時間)と入庫時刻から四〇分後までの四〇分間(終業点検等のための後始末時間)との合計一時間の非乗務時間と、次の計算方法により算出した乗務時間との合計時間とする。

3  乗務時間は、走行距離一キロメートルを二分として、一日の全走行距離をその割合によって換算した時間とする。

4  右計算方法による労働時間が八時間を超える場合には、右拘束時間から被告所定の休憩時間一時間を差引いた時間から被告所定の休憩時間一時間と労働基準法所定の労働時間八時間との合計九時間を差引いた時間を上限として、右八時間を超えた時間に対して労働基準法所定の割合による時間外労働割増賃金を支払う。

右計算方法による労働時間が八時間以下の場合には、右拘束時間から被告所定の休憩時間一時間を差引いた時間が八時間を超える限り、八時間の労働時間に対する所定の賃金を支給する。

拘束時間から一時間を差引いた時間が右計算方法による労働時間を超え、かつ、八時間を超える場合には、右超えた時間から時間外労働割増賃金を支給された時間を差引いた時間を時差時間と称して、その時間に対し、前記の基準額による時差手当を支給する。

拘束時間から一時間を差引いた時間が八時間未満の場合には、八時間に満たない分に対する賃金は支給されず、拘束時間に八分の一を乗じた割合の賃金が支給される。

四  ところで、右拘束時間のうち、出庫時刻二〇分前から出庫時刻までの二〇分間と入庫時刻から入庫時刻四〇分後までの四〇分間との合計一時間が労働時間であること及び出庫後入庫までの時間のうち現実に走行している時間が労働時間であることについては当事者間に争いがないが、出勤時刻から出庫時刻の二〇分前までの時間と入庫時刻四〇分後から退勤までの時間及び乗務時間のうち駐・停車等の非走行時間について、原告らはいずれも労働時間であると主張し、被告は拘束時間ではあるが休憩時間であって労働時間ではないと主張するので、次にその点につき検討する。

1  まず、出勤時刻から出庫時刻二〇分前までの時間と、入庫時刻四〇分後から退勤時刻までの時間についてみるに、(人証略)によれば、そのような時間は、八時五〇分以後の出庫指示がなされた場合に八時三〇分までに出勤した場合の八時三〇分から出庫時刻二〇分前までの時間と、一四時五〇分より前に入庫した場合で一七時三〇分まで退勤しなかった場合の入庫時刻四〇分後から一七時三〇分までの時間とであるところ、乗務勤務の運転手がそのような出勤、退勤方法をとるのは、必ずしもそうしないと遅刻、早退として賃金カットをされるからではなく(もっとも、出、入庫時刻との関係で、被告所定の労働時間八時間を充たすためにそのような方法をとる必要に迫まれ(ママ)る場合もあるが、そのような必要がない場合にもそのような方法をとる場合)、主として、右時間が前記時差手当の支給の計算上、その対象時間に含まれているからであり、他方、被告がそのような時間を時差手当を支給する時間に含めているのは、原告原田三郎本人の供述ほどの頻度ではないにしても、客からのいわゆる飛び込みの注文や、利用方法の変更あるいはその他突発的事態にできるだけ対応し易くするため、運転手の員数に余裕をもたせる実効をあげるべく、運転手を常時待機させるなどの手段として、右時間における勤務を督励しているからであり、その時間は、仮眠をしたり私用をしたりするなどの運転手の自由な利用に委ねられている面が多いとはいえ、被告の指示があれば、それに応ずることができるよう所在を明らかにしておくなどの準備を要求され、また、各運転手の受持ちのバスの清掃、点検等をなすことを期待されていた(明確な指示がなされていたことまでを認めるに足りる証拠はないが)のであって、それらによると、右時間は、運転手による自由な利用が十分に保障されたところの休憩時間ではなく、手持ち時間たる労働時間であると認められ、(証拠略)中、右に反する部分は措信できず、その他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

2  次に、駐、停車時間についてみるに、(人証略)によれば、運転手は、駐、停車時間(配車地における場合を含む)においても、客とのスケジュールの確認、客の乗降の安全の確認、車輛の清掃、点検、車輛の内外の監視、駐車場の整理に伴う車輛の移動、車内に残留ないしは途中で車内へ戻ってきた客との応接もしくはその安全の確保、客の要請によるなどの運行スケジュールの変更への対応の準備など、運転そのもの以外の付随的作業をなすことや、いつでも運行できるよう待機する必要があることが認められ、右各証言中、右に反する部分は措信できず、その他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

それによれば、右駐、停車時間は、労働時間であるというべきであって、それを休憩時間とする被告の主張は理由がない。

なお、右各証拠によれば、右駐、停車時間において、運転手は、食事をしたり、他の私用を足したりし、時には仮眠(これは、運転の安全を確保するための運転者の義務であることもあるが)もできる場合もあり、駐車場や休憩所が完備している場所での駐車時間においては、運転及びその付随作業から長時間解放され、運転手の自由になる時間が多いことが認められるが、しかしながら、そのようなことがあるからといって、労働密度が薄いか、たまたま休憩時間と同様の状態が生ずるに過ぎず、前記認定にかかる駐、停車時間の性質自体を左右する事由とはいえず、従ってそういったことを考慮して、労働基準法所定の休憩時間のとりかたを運転手の裁量に委ね、乗務時間のうち一定時間を休憩時間とみなす扱いをする余地は認められるとしても、その限度を超えて、右駐、停車時間の全部を休憩時間とすることは認められない。

3  次に、(証拠略)によれば、被告においては、運転手の一日の走行距離の上限が定められている関係から、一運行について二名の運転手を配置して、そのうちの一名が、出勤後に他の交通機関を利用して指定地に赴き、そこで、他の運転手を引継いで乗務する場合や、指定地まで運行した後、そこで、他の運転手に運行を引継いだ後、他の交通機関を利用して帰社する場合のあることが認められるが、それによると、右他の交通機関を利用している時間は、格別に作業を義務づけられないとはいえ、指定地までの運行及び指定地からの運行に不可欠なものであって、被告の業務命令に基づくものであって、出発地及び帰着地が被告の所在地と定められているものというべきであるから、それに右賃金支払の対象時間となっていることを考え併せると、右時間は、それ自体がその前後の運行の一部を構成するものとして、労働時間であるものと認められる。

4  次に、(証拠略)を総合すると、被告においては、スキーバスの運行などで、目的地において客と共に宿泊するような乗務の場合、一七時三〇分前に目的地に到着して後始末を終えて旅館に入った場合や、翌日八時三〇分より後に準備作業をして運行を開始した場合において、一七時三〇分まで及び八時三〇分からを賃金支払の対象時間とし、目的地において一日中運行をしない日がある場合は、その日を下車勤務として扱い、八時三〇分から一七時三〇分までを賃金支払の対象時間としていることが認められるが、右各証拠によれば、運転手は、右時間において、そのほとんどの時間作業をしていないとはいえ、エンジンをかけてみるなどの車輛の点検、清掃、客との打合わせ等を義務付けられており、また客からの運行計画の変更に対応すべく待機しているのみならず、そもそも目的地における車輛の保管自体を委ねられていること、それらに要する時間の位置及び長さが一定しておらず、休憩時間と判然とした区分がなされていないことが認められ、それに右賃金の支払の対象時間とされていることを考え併せると、右時間は任意の一時間を休憩時間とみなす以外は労働時間(所定の勤務時間以外に乗務がなければ所定の労働時間八時間の労働をしたものと解すべきである)であるというべきである。

五  しかして、右三の1ないし4の労働時間及び賃金等の計算方法によると、一日の走行距離の合計が二一〇キロメートル(乗務時間七時間に相当する)を超えない限り、一日の拘束時間(これは、被告所定の休憩時間一時間を除いて、右四のとおり労働時間である)が九時間を超えても、それを超えた時間に対しては、時間外労働割増賃金が支払われることがなく、また、一日の走行距離の合計が二一〇キロメートルを超えても、即ち、計算上の労働時間が八時間を超えても、拘束時間から被告所定の休憩時間を差引いた時間が八時間を超えている場合には、右八時間を超える時間を限度として、それを超えた時間に対応する時間外労働割増賃金が支払われるに過ぎなく、従って、運転手にとって走行時間に応じた時間外労働割増賃金より有利となる走行距離に応じた時間外労働割増賃金が支払われる場合は、拘束時間が九時間以内に二一〇キロメートルを超える走行距離を達成した場合に限られる結果となり、それに、拘束時間が九時間でありさえすれば、走行距離の合計が二一〇キロメートルに達していなくても、賃金カットはされず、所定の賃金が支払われることとなることを併せ考量すると、拘束時間九時間内において、走行距離二一〇キロメートル以上の労働密度があった場合には、労働基準法所定の時間外労働割増賃金とは異質な特別の割増賃金、換言すれば、所定時間内賃金の割増金が支払われるが、それ以外の場合には、前記計算方法による労働時間が拘束時間から休憩時間一時間を差引いた時間を超えている限り、拘束時間から被告所定の休憩時間一時間を差引いた時間(労働密度とは関係のない労働時間そのもの)に対応する所定内賃金及び労働基準法所定の割合による時間外労働割増賃金が支払われるが、前記計算方法による労働時間が拘束時間から休憩時間一時間を差引いた時間に足りない場合には、拘束時間から一時間を差引いた時間が八時間を超えていても、それに対応する労働基準法所定の時間外労働割増賃金が、前記計算方法による労働時間の八時間を超えた分に対する部分のみそれに対応した分しか支払われないか、まったく支払われず、ただ、拘束時間から被告所定の休憩時間一時間を差引いた時間から時間外労働割増賃金が支払われた時間を除いた時間に対し、前記基準による時差手当が支払われるに過ぎないこととなり、結局、労働基準法所定の労働時間八時間と休憩時間一時間との合計九時間を超えた労働時間に対しては、労働密度を斟酌した賃金の支払部分はなく、しかも右労働時間中、時差手当の支給の対象となった時間に対しては、労働基準法所定の時間外割増賃金より少ない時差手当しか支払われず、同法所定の時間外労働割増賃金は支払われないことになっていたものというべきであるから、被告は、原告らに対し、右時差手当を支給した時間に対し、その時間数に応じた労働基準法所定の時間外労働割増賃金を支払うべき義務があることとなる。

六  ところが、被告は、前記のとおり、原告らに対し、別紙債権目録の時差手当欄記載の時差手当が支給された時間、即ち被告のいうところの時差時間が労働時間であるのにもかかわらず、それは休憩時間であって労働時間ではないとして、右時差時間に対しては、前記基準による時差手当を支給しただけで、労働基準法所定の時間外労働割増賃金を支払わなかったところ、原告らのなした時間外労働の時間数は、別紙債権目録の各原告に対応する時差手当欄の額を、その支給された月に対応する前記一時間当りの時差手当の額で除したものとなることが計算上明らかであり、原告らの右時間外労働に対する割増賃金の算定の基礎となる賃金額は、別紙債権目録の各原告に対応する労基法所定の割増賃金の基礎となる賃金欄の額であることは当事者間に争いがないから、原告らは、被告に対し、別紙債権目録の各原告に対応する労基法所定の割増賃金欄記載の額から時差手当欄記載の額を差引いたところの差額欄記載の時間外労働割増賃金の支払を求めうることとなる。

七  他方、被告における原告らに対する賃金の支払期日が毎月二七日であることについては、当事者間に争いがないところ、原告新木彰の本件請求のうち、別紙債権目録の同原告に対応する昭和五三年七月分から同五四年四月分までの同目録差額欄記載の時間外労働割増賃金請求権については、各支払期日の翌日から二年間を経過したことにより、労働基準法一一五条所定の消滅時効が完成したことが明らかであるから、同原告の本訴請求のうち右の部分は失当であることに帰する。

また、それに伴い、右請求に対応する附加金の請求も理由がないことに帰する。しかも、右附加金の請求権は、右時間外割増賃金の支払期日の翌日である毎月二八日から二年間を経過したことにより、同法一一四条但書所定の除斥期間が満了もしていることが明らかであり、この点からも右附加金の請求は失当である。

八  なお、被告が原告らに支払った別表の乗務手当は、右金額自体及び弁論の全趣旨によれば、特定の乗務について支払われるものであることが認められ、他方において、それが、勤務時間に対応するものであること、または、全時間外労働時間に対する割増賃金を十分に充足するものであることを認むべき確たる証拠がないことに徴し、時間外労働割増賃金の支払と認めることはできない。

九  原告らの附加金の請求については、被告による前記時間外労働割増賃金の不払が、(人証略)により、労働組合の了解のもとに実施された前記労働時間及び賃金等の定め方に因って生ずるものであることが認められること、及び労働基準法の解釈の誤りに因って生ずる面が大であることに徴すると、被告に対し、制裁としての附加金の支払を命ずることは相当でないものというべきであるから、原告らの右附加金の請求はすべて理由がない。

一〇  従って、原告らの本訴請求は、主文第一項掲記の時間外労働割増賃金とその各月分に対する各支払期の翌日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、これを認容し、その余の請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 草深重明)

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